Interview withHideaki Ogawa @ Ars Electronica Festival 2011, Linz

アーティスト、リサーチャーとして多方面で活動されている、アルスエレクトロニカ・フューチャーラボの小川秀明さんとお会いすることができました。
多忙なフェスティバル期間中にも関わらず、貴重な時間を割いて下さった小川さんに感謝を申し上げつつ、ここではその一部をご紹介したいと思います。

「アート・テクノロジ・社会」をテーマにしたリンツ市の社会振興

リンツ市中心部にあるアルスエレクトロニカセンターと、併設されたフューチャーラボ(→脚注ページ内右下) 内を見学させていただきながら、アルスエレクトロニカの発展について小川さんのお話を伺いました。

Photo by rubra

− アルスエレクトロニカの運営について聞かせていただけますか。リンツ市とはどのような協力関係にあるのでしょうか?

(アルスエレクトロニカ社は)リンツ市が100%所有する会社で、基本的にはリンツ市から支援を受けながら運営しています。フューチャーラボに関しては、内部的に独立採算で運営しています。センターの運営予算も、フェスティバルの運営予算も市から援助を受けています。

− 「アルスエレクトロニカ」の事例を地域活性のモデルとしてとらえた場合、そのような事例はヨーロッパでは一般的なのでしょうか?

地域活性のモデルとしては、ヨーロッパの中でも特に先駆的なモデルとして知られています。(リンツは)ウィーンとザルツブルグの中間で、この2都市はまさにザ・トラディッションというか、既に音楽を中心とした文化都市として有名です。
30年ほど前のリンツは実は鉄鋼の街で、今も巨大な工業地帯があります。30年前に来た人に言わせると、リンツってスモークというか、労働者の街、汚い街のイメージだったそうです。そういうところから、どうやって文化を根付かせていこうかと思った時に、モーツァルトの真似してもたくさんあるし(笑)、そうじゃないだろうと決断した人達が1979年からスタートさせたのが、「アルスエレクトロニカ」です。

我々は基本的に「メディアアート」を前面に出すことはしてきませんでした。むしろ「アート・テクノロジ・社会」という3つの要素を常に話します。日本では解りやすいので「メディアアート」っていう単語を使いますけど、「アルスエレクトロニカ」は「アート・テクノロジ・社会」の中で色々な創造的な活動を常に追いかけています。そのモデルは、基本的にはテクノロジが止まらない限り継続できるモデルだと思います。「メディアデザイン」とか「メディアアート」って言わなかったというのは結構重要だと感じます。歴史を見ていくと、「マルチメディアアート」と呼ぶ時代もあったと思うんです。日本でいうと「つくば万博」の頃とか。そういった単語ってどんどん変わっていくんですよね。変化してゆくテクノロジと社会を見据えつつ、その創造性に着目したことは、(「アルスエレクトロニカ」にとっては)大きなポイントだったかなと思います。

「アルスエレクトロニカフェスティバル」は、専門家向けのイベントと思われがちですが、去年あたりからかなり意識的に一般向けの施策を入れています。昨年は、一般のお客様含め90,227人ご来場頂きました。一般の人がいらっしゃったからこの数字が動員できたのです。例えばどうやったかというと、川沿いの裏に使われなくなった広大なタバコ工場があって、「Repair」というタイトルで工場を再生する試みを行いました。市側からのリクエストがあって、街の都市開発の一環としてフェスティバルを使うことも多いです。オープニングを街の景色が見渡せる丘のところで大々的にやった年もありますし、4年前はリンツの地下に巨大な(ナチス時代の)地下遺構があってそこをオープニング会場にしました。(地下遺構は)10年位前はまだタブーだったみたいですが、少しずつ風穴が空きはじめて、そういったものをどう見直していくかって事がこのイベントを機にやりやすくなった感じですね。街興しの一環にフェスティバルが関わって、またそれが活用されていくといったスタイルになりつつあります。

− 今年のフェスティバルで新しくトライしたところはありますか?

基本的には二つあります。ひとつは、セルン(→脚注ページ内右下) という外の組織とのコラボレーション。今年、「Collide@CERN」という新しいアワードを設置しました。これに採択されると、セルンとフューチャーラボの両方にレジデンスしながら作品制作の支援を受けられます。更にその作品がセルンとアルスエレクトロニカフェスティバルに展示されるというプログラムです。もしよろしければみなさんも応募して下さい。僕も応募したいくらいです(笑)。そういう新しい、違う領域のパートナーを開拓できたっていうのが大きいですね。

もうひとつは、クリエイト・ユア・ワールド(フェスティバル期間中に開催されていた19歳以下のための展示・ワークショップなどの企画群)です。(「アルスエレクトロニカ」は)専門家の人達には国際的に有名ですけど、一般的な人にリーチしていく時に、エデュケーションとか子供の未来の事を考えてどんな貢献ができるかということも、重要と考えています。今年のクリエイト・ユア・ワールドは、フェスティバルの中のフェスティバルという位置づけでやっていますが、日本のものとは、ちょっと雰囲気が違いますよね。日本でももっと自由な感じで、アーティストの人達が先頭にたって旗を振ってできるようになるといいですね。こういうスタイルのものは、もっと増えてもいいかなと思っています。敷居がかなり下がって見えるじゃないですか。普通の人達ももっと来て頂きやすくなりますし。その辺りのチャネルがひとつ増えたかなと思います。

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小川秀明

小川秀明 (おがわ・ひであき)

オーストリア・リンツ在住のアーティスト
アルスエレクトロニカ フューチャーラボシニアリサーチリード
アートプロジェクトh.o代表

聞き手 :
菊地玄摩 (きくち・はるま)

東京在住のデザイナー、ディレクター
ユニバ株式会社代表取締役

[脚注]

フューチャーラボ (Future Lab):

アルスエレクトロニカセンター内に設置された、数十名のアーティストとリサーチャーからなる組織。外部の機関と連携しながら創作・研究活動を行っている。
http://www.aec.at/futurelab/jp/

セルン(CERN):

欧州20ヶ国が共同で運営する、素粒子物理学の研究機関。正式名称は、「欧州原子核研究機構(The European Organization for Nuclear Research)」。
http://public.web.cern.ch/public/